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信用の器 フラスコ

「情熱があれば貯金できる、大丈夫!」

長期的な視点であなたの夢を目標に変えて実現する、人生計画マスターコーチの安田修です。

『ふわっとした起業の相談に来る人って「貯金がなくても情熱があれば大丈夫!」って言って欲しいみたいで、「情熱があれば貯金できる、大丈夫!」って言うとものすごいがっかりした顔をする。』ってFacebookに書いたら反応が大きかったので、ブログにしてみました。起業する際には情熱も大切ですが、貯金はもっと重要ですよ。

「貯金がないが情熱はある、起業しても大丈夫でしょうか」

ことの発端は、「起業支援」という看板を掲げていると(今はあまり掲げていませんが)こういう相談者が多いという話です。アイディアには自信がある、まだお客さんはいないが応援してくれるという人はたくさんいる、何より自分には情熱があるから、大丈夫だと思うがどうか、と。絶対「大丈夫」って言ってほしいだけですよね、これ。

で、ざっくりとした事業プランを聞いていると、ありふれているし大して良いとは思えません。こういう人に限って「いや、細かなことはまだお話しできません(マネされると困るから)」みたいな。じゃあ勝手にしたらと思うのですが、でも一応、相談されれば貯金は絶対にある程度、貯めてから挑んだ方が良いですよ、とお伝えします。

そこで冒頭のやりとりですよ。情熱があるなら、まずはその情熱をもって貯金をすることです。いくらかと聞かれれば、独り身だとしても少なくとも300万円、家族がいるなら1千万円とお答えしています。もうね、ドン引きですよ。こんな素人のところに相談に来るんじゃなかった、みたいな険悪な雰囲気に包まれます(笑)。

天才起業家とサバイバーズ・バイアス

世の「起業支援」をしている方々には、ご自身が貯金ゼロに近い状態から成功した経験を語る人が多いように思います。「貯金なし、人脈なし、専門知識なし、学歴なし。大丈夫、あなたにもできます!」というわけですよ。ほんと、無責任だなあと思いますよ。まずこういう人って、良くも悪くも一種の天才ですからね。

何かの才能があったか、ビジネスセンスが半端ではないのか、良い出会いがあったか、本当は人脈や専門知識があるか、不確かなことを「絶対大丈夫!」と言い切ることができるハートの強さがあるのかわかりませんが、何か特別なものをもっているんです。その上で、すごく努力もできて運も良い人なんです。成功者なんですよね、例外的な。

なぜか見渡すと成功者がみんな「貯金なんかなくてもできる!大丈夫!」って言っているような気がしますけど、これ、たまたま生き残った人しか発言権がないから、つまりサバイバーズ(生存者)バイアスですからね。貯金ゼロからスタートしてあっという間に失敗した人は沈黙しているだけですから。そして、貯金があって成功した人は当たり前なのでわざわざそのことを言わないし、言っても誰も注目しないだけのことですから。

貯金は弾丸であり防具であり、命そのもの

もちろんビジネスアイディアや人脈、知識、能力、情熱といったことは大切です。しかし、それと同じくらい貯金は大切です。単純に、経営とはお金がなくなったら負け、というシンプルなゲームなんです。銀行は経営者の貯金額を見て融資可能かどうかを判断しますし、投資家からお金を集めるにしても時間がかかることもあるでしょう。

スモールビジネスで在庫や人の採用が要らないコーチ・コンサル・士業などの業種を選ぶとしても、パソコンやホームページ、オフィス、必要最低限の営業ツールを揃えるだけであっという間に100万円くらいは消えていきますよ。集客のために広告を出しても数万円投下したのに効果がない、なんてザラです。仕入れとしての勉強や交流会にもお金がかかります。そういう最低限のところをケチれば、冴えない感じが滲み出て信用を失い、負のループに入ります。

攻めにも守りにも、何かとお金はいるんです。そしてビジネスで頑張っている間も生活もあり、予定外の出費があり、キャッシュはメラメラと音を立てて燃えていきます。お金がなければ戦略的な投資や時間をかけてじっくりと育てるビジネスモデルが選択できず、結果として成功する確率が下がってしまいます。しんどいですよ。

なぜ情熱があるのに、貯金がないのか

「情熱があれば貯金できる、大丈夫!」という言い方で伝わると思いますが、そもそも情熱があるのに貯金がないという状況がいかがなものかと思うんです。本当にそのことがやりたいなら、なぜお金を貯めていないんですかと。銀行も結局、私と同じようにそこに疑問を持つから、貯金のない人にはお金を貸してくれないんですよ。

当たり前ですけど、貯金=収入−支出ですよね。「給料が安いから貯められない」なら能力に疑問を持ちますし、副業をするという手もあるのに、と感じます。「他に使ってしまった」のなら優先順位の問題です。この人の情熱とは、その程度の位置付けにあるのか、と。お金を貯められないのにビジネスはうまくいくと思っている根拠も、わかりません。貯金の方がビジネスの成功よりはるかにハードルは低いですからね。

10年立ち止まれとは言いません。せめて1年か2年、最低限の生活をしつつ精一杯稼いで、貯金をしましょう。そんなことをしている間に情熱が冷めてしまうと言うならば、最初からその程度の情熱だったということですよ。千載一遇のチャンスを逃す?多分まだあなたのアイディアにはそこまでの価値はありませんから、それも大丈夫ですよ(笑)。なんだか救いのない話になってしまいましたが、これが現実です。それでは、また。