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信用の器 フラスコ

何をやるかよりも、誰がやるか

夢とお金の専門家。シナジーブレインの安田 修です。

開業以降、起業を目指す方とお話をする機会が増えてきました。そこで気付くのが、「画期的なアイディアさえ思いつけば起業するのに」というスタンスの方が多いんですね。それって、ちょっと違うんじゃないですかという話です。

成功している企業は画期的なアイディアを持っていたのか

そもそも、画期的なアイディアで起業をして、大成功している企業なんてそんなにありますか?という話です。ミドリムシのユーグレナとか、創業期のマイクロソフトやアップル、ソニーなんかは、まあそうでしょうか。

しかし殆どの成功している企業は、画期的なアイディアによって成功しているわけではありません。Facebook(SNS)が画期的なアイディアとはとても思えませんし、Amazonだって言ってしまえば、本の通販をやっているだけです。ましてや、mixiや楽天などはそれを模倣してある程度、成功しているわけです。

任天堂は花札屋さんでしたし、ライブドアは最初はホームページの作成を、ソフトバンクは本やソフトウェアの販売をしていたわけです。「これがあれば世界を変えられるぞ!」と確信を持てる商品を見つけてから企業をするというケースは、むしろ希なのではないでしょうか。

とにかくキャッシュを生むことを、労働集約的でも何でも良いのでやってみて、そのうちに良いアイディアがあれば試していく、というのが実は王道なのではないかと思うわけです。PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)風に言うと、まずはキャッシュカウを作るんです。

画期的なアイディアがあれば成功できるのか

そして更に言えば、画期的な商品を持った企業が勝ち残っているかというと、そんなことはないのではないでしょうか。誰にも真似のできない技術があればそういう勝ち方ができるのかもしれませんが、そんな技術が世の中にいくつあるでしょうか。殆どないのではないでしょうか。

そういう、参入障壁になる技術が無いのであれば、良いアイディアは必ず誰かに模倣されます。そしてその誰かは、あなたとは比べ物にならないくらい大きな資本を持っている企業だったりするわけです。優れたアイディアであっても、それが優れたアイディアであればあるほど、いずれ大きな資本に潰されるのが現実です。

古くはソニーのベータと松下のVHS(ビデオの話なんて、本当に古くなりましたね)のエピソードにもあるように、技術的に優れている方が勝ち残るというわけではありません。かといって、結局はお金持ちが勝つと言っているわけでもありません。オペレーションを徹底した方が、勝つんです。

もちろん商品力は重要ですが、一般的にはビジネスの現場は、似たような商品力のものをいかに売るかという戦いです。そこで戦略的な販売戦略なり、コストの削減なり、そういう地道な努力をどこよりも徹底できる企業が勝ち残る。これは大企業のみならず、スモールビジネスにおいても同じです。

マーケティングの世界ではUSP(Unique Selling Proposition)なんて言葉がまことしやかに使われていますが、「強力で、他者が決して真似できない強み」なんて、どこにもありませんよ。ただ、「そこそこ説得力があって、誰でもできるわけではないかなという程度の強みらしきもの」があれば良い(笑)。あとは、オペレーションの問題です。

本当のボトルネックは「アイディア」なのか

ということで、「画期的なアイディアさえ思い付けば起業する」なんていうのは、「とりあえず今は起業をしたくない」と言っているのと同義です。英語の仮定法過去「もし私が鳥だったら、空を飛び回るのになあ(=鳥ではないので飛べない)」と同じです。そういう人に限って、「労働集約的なビジネスはしたくない」なんて言ったりする。

労働集約的ではない、すなわちストックビジネスを作るには、時間がかかります。何より、逆説的なことですが、すごく労働力がかかるんです。本来は労働集約的に稼ぐところを、何か別の仕組みなり、他の人の労働に置き換えたものがストックビジネスですから、手間の初期投資を惜しんでできるものではありません。

具体的な試行錯誤もしない状態で、楽して儲かる凄い仕組みが思い付くまで待とうなんて、いつまで経っても現実にはなるはずがないですよ。それなら宝くじか馬券でも買った方が、行動している分だけ、まだ成功する可能性があります。とりあえず「いつかは起業したい」って言いたいだけですよね、それ、って思うわけです。

結論として、アイディアは平凡であったとしても、それを徹底してやり込めるだけの熱意を持った人であれば、起業をして成功する可能性は高いでしょう。その逆は、残念ながらどこかで失敗するでしょう。なので私は、何をやるかよりも誰がやるかが重要だと思います。

例えば「ラーメン屋をやりたい」という人がいたとして、それが世の中に一つしかない画期的なアイディアのラーメン屋ではなかったとしても、その人が優秀でかつ熱意がありさえすれば、私は応援します。そういう人であれば、試行錯誤の中で「画期的なアイディア」に辿り着くこともあるでしょう。それでは、また。